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名所図会 巻4-29 犬鳴山七寶瀧寺

犬鳴山いぬなきさん七寶瀧寺しつほうりうじ


犬鳴山いぬなきさん七寶瀧寺しつほうりうじ [全景]


犬鳴山いぬなきさん七寶瀧寺しつほうりうじ


犬鳴山路いぬなきさんろ

むかし猟夫りやうふあつて、いぬひき山中に入て鹿しかうかゞふ。かたはらたき毒虵どくじや有て猟師をのまんとす。猟夫がこゝろ鹿しかに在て、これをしらず。いぬ数声すせいほえて其しゆつくる。猟師いまだこれをさとらず。鹿、犬のほゆるにおどろひて去ぬ。猟夫いかつて其犬をる。犬のかしらをとつて毒虵どくじや齧殺かみころす。其時犬恩義おんぎを知てわがいのちたすけし也。これによつて出家してこゝに一精舎しやうじやを建けり。故に犬鳴山いぬなきさんと称ず。

大木村おほきむらの東にあり。巉崖さんかん危磴きとうにして、蓁樹しんじゆ茂密もみつなり。路傍ろぼう梵字ぼんじゑりたる標石ひやうせき、壱町ごとにあり。大木おほきよりのぼる事、すべて廿町也。山中に飛泉たき七つあり。其下流かりうみちまたがりみぎにしひだりにして、岩上がんしやうのぼる。そのなかば大巖だいがんあり。山上嶽さんじやうがだけ大天上おほてんじやうの如し。

本堂
山上にあり。中尊、不動明王、みたけ、壱尺八寸、役行者の作。左、役行者、右、弘法大師。宗旨、真言古義。

燈明嶽とうみやうがだけ
当山の絶頂ぜつてうをいふ。西の海面うみづら闇夜やみよ渡海とかいの舩、方角ほうがくを失ふの時、当山の不動尊を念する時、此みね燈明とうみやうかゞやくといふ。

两界瀧りやうかいのたき
登山の初にあり。口の瀧ともいふ。

たう瀑布たき
两界の上にあり。二の瀧ともいふ。

弁財天瀧べんざいてんのたき
又、其上にあり。三の瀧ともいふ。

固津喜瀧こつきのたき
又、其上にあり。四の飛泉たきともいふ。

おくたき
又、其上にあり。五の瀧ともいふ。

千手瀧せんじゆのたき
又、其上にあり。六の瀧ともいふ。

布曳瀧ぬのひきのたき
又、其上にあり。七の瀧ともいふ。

この七つの瀧より七寶瀧寺といふ。[寺記]曰、むかし、さきの九條殿下でんか植通うへみち公、一時あるとき、此山に登臨とうりんして和歌をゑいし給ふ。
おもひきやなゝたからたきにきてむつのにごりをきよむへきとは 九條殿下
豆蔦まめつたにみちをもとめつ瀧の水 籬 嶌

東覗ひがしののぞき  西覗にしののぞき
倶に当山の行場也。本堂の上にあり。

笈掛石おいかけいし  四寸巖しすんいは
登山の道にあり。

屏風岩
当山の北にあり。

行場石ぎやうばいし
役行者、修行し給ふ所也。当山の奥にあり。

天狗松てんぐまつ
燈明巖の西にあり。

風穴かざあな
奥の瀧の上にあり。四時、風を起す。

連理枝れんりのゑだ
本堂の下にあり。

押上石おしあげいし
本堂の臺石なり。幅十丈。髙三十丈許。本堂を岩上へさゝをきたるが如し。

大黒石だいこくいし
口の瀧にあり。

虵腹じやはら
本堂の上にあり。

梵字石ぼんじせき
当山に四十八ケ所あり。志一上人、これを建る。山中に毒虫どくちう魍魎まみの類なし。此密印みついんの奇特にや。

石綿いしわた
奥の瀧の傍にあり。

官女くはんじよ志津墓しづのはか  なみだたき
共に道の傍にあり。

犬の墓
道の左十間許にあり。石面にぼんじゑる由縁ゆゑんひだりに見へたり。

それ、此山は役優婆塞ゑんのうばそく草創さうさう也。自作じさく不動尊ふどうそん本尊ほんぞんとす。犬鳴いぬなきなづくる事は、むかし、猟師れうしありていぬひき、此山に入て、一鹿しかうかゞふ。かたはらおほひなるじやあり。かしらあげて、かの猟夫れふふのまんとむかふ。猟師れふしこゝろ鹿しかにあつて、これをしらず。いぬ数聲すせいはつし、しきりないて、そのしゆつぐる。猟夫れふふ、いまだその由致ゆちさとことあたはず。鹿しかいぬほゆるにおどろひてりぬ。猟夫れふふ、大にいかつそのいぬる。いぬかしらたちまちをどつじやかみころす。於是こゝにおいてそのなくことみだりならざる事をる。其時そのときひとみないはく、此いぬ不動ふどう使獣しじうこれひとへ明王みやうわう霊驗れいげんなり。猟夫れふふ感嘆かんたんして此てらいり薙髪ちはつして、なが殺業せつげうやめける也。かるがゆへに、犬鳴山いぬなきさんといふ。またみな白雲院はくうんゐんがうす。むかし、淡<路あはぢの小聖せうせいといふものあり。しばしば禁闕きんけつ上下しやうかし、雲客うんかくしたがふ。宮嬪きうひん志津しづといふ女、此小聖せうせいて、戀慕れんぼいちまちおこて、寤寐こびわするゝことなし。花鳥くはてう使つかひもゝつうず。小聖せうせい、これをさけんとて、此山にのがかくる。志津女しづぢよあとふて、巖徑がんけい崎嶇きぐういたる。其時そのとき忽然こつぜんとして、白雲はくうん掩映ほんゑいし、にはかに、小聖せうせいところかくす。志津女しづぢよ悲泣ひきうたへずして、路傍ろはう愁死しうしす。ときひと、これをあはれんて、葬埋そうまいす。此つかくもあれば、すなはち、かならずあめる。これ志津しづ餘涙よるいといふ。またかたはら小瀧せうのたきあり。これをなみだ飛泉たきとなづく。白雲小聖はくうんせうせいようするは、まのあたりに不動尊ふどうそん擁護をうごするところ也。故に院号ゐんがうとす。南朝なんてう正平しやうへい年中に、志一しいつ上人といふあり。紀州きしう粉河こかは英産ゑいさんにして、顕密禅けんみつぜん三宗さんしう兼修けんしうす。土丸城主つちまるじやうしゆ橋本はしもと判官はんくはん正髙まさたか勧励くはんれいして、ほゞたう再営さいゑいし、寺院じゐん経始けいしす。じつに此山の中興ちうこうなり。そもそも当山たうさんをかんが見るに、荊州けうじう衡山かうさんにやしぬらん。劉敬淑りうけいしゆく古時こし文字もじ、あるは鳥跡とりあとのこしける神禹しんうもあらんや。火德くはとく中天ちうてん日月じつげつたすけ、炎方ゑんはうちう乾坤けんこんちんずるの霊區れいく也。 此山の土産とさんにはべといふあり。これをとついゑおさむ。大峯おほみねなぎるい也。
      犬鳴にて
山里はねられさりけり夜もすからまつふく風におとろかされて 和泉式部
岩檜葉の間をめくりて瀧凉し 斑 竹
秋の夜や犬鳴山の経の声 衆 雲

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作成:2014年 8月25日 20:43:05 再構築
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